――子どもの頃、どんなものを食べてましたか? おいしかったものは何ですか?
ずっとずっと大人になっても、心の中にキラキラと残っているものは何ですか?――
(YOU掲載時の口絵リード)
オリジナル初出 | YOU 2002年1月15日号・No.2/2002年1月8日発売 | |
単行本収録 | コミックス第12巻、文庫第8巻 |
(2002/1/9, 2002/12/13修正)
最近の原作は内容的にも一つの型が出来上がっているような印象です。悪く言えばワンパターンってことになるんですが、半年に一度くらいで読むと「ああ、やっぱり田所家は変わってない」と懐かしさと安心を覚えます。でも単行本で一気に読むと、どの話も同じように感じるかも知れませんね。
といったことを考えたくなるくらい、今回の「おもいでごはん」の展開は前作によく似ています。もっと似ているのは1999年の「かくれんぼ」です。慶彦を中心に据えた話は最近、中村と一緒に営業するシーンに始まって、取引先の上司のリストラや離婚などの不幸を知って自分の家の姿と重ね合わせる、というパターンが多いですね。
ただ、今回は「食事」に視点を合わせ、それが見どころになっています。深見先生は最近の家族の孤食化傾向に物申したかったのでしょう。とてもよく分かります。
麻美は掃除や洗濯は「ぐーたら」そのものですが、食事、特に夕食は手を抜いていないのです。貧しいのでいつも粗食ですが、決してみじめな食卓には見えません。
麻美は家事が苦手なのに、なぜ夕食はきちんと作るのだろう? 「ぽっかぽか」を見てそう思った人はいませんか? これは料理の上手下手という問題ではないと思います。深見先生は、一緒に食べる食事の大切さをずっと訴え続けていたと思うのです。
「でも麻美は朝寝坊で、朝食にはいつも居ないじゃないか」と言う人もあるでしょう。しかしよくよく考えてみれば、あすかが一人で朝食をとったり、慶彦が朝食の準備をするシーンはドラマ独特の映像です。原作でも出てこないわけではありませんが、ドラマほど強調されていません。逆に原作ではしつこいくらいに夕食を準備したり、3人で食事をするシーンが出てきます。ですから深見先生は「みんなで食べる食事」にかなりこだわりを持っているのだと思います。一方ドラマ化したスタッフは、食事のシーンを増やすとあまりにも典型的なホームドラマになってしまうこともあって、少し趣向を変えたかったのかも知れませんね。
今後も原作ではたぶん、たとえ朝食でも一人で食事するあすかの姿が描かれることはないのでしょう。
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