――子育てにおいて、父親のできることって何だろう!?――
(YOU掲載時の表紙リード)
オリジナル初出 | YOU 2001年2月1日号・No.3/2001年1月15日発売 | |
単行本収録 | コミックス第12巻、文庫第8巻 |
(2002/12/13全面改訂)
前作「のはら」から5か月後に発表された作品ですが、内容的には続編となっています。今回も虐待の疑いのあるみさきちゃんという女の子を持つ林さん親子の話です。「のはら」では林さんの問題に対する根本的な解決がなされないままストーリーが終わっていたのですが、今回はご主人が登場し、夫婦間の対話を取り戻すという展開になっています。
つまり先生は、夫の存在が林さんの虐待の原因(の一つ)になっている、と考えているようです。冒頭では慶彦があすかにミルクをあげていた頃のエピソードが出てきますが、これももちろん今回のテーマが父親にあることを示す意味で差し込まれたものでしょう。
前回の林さんは、麻美や吉田さん、坂田さんから「女4人で不良しましょう!」と言われたところで終わっています。みんなにいろいろ言われて反省し、一見解決したかのように見えたのですが、あれから5か月が経ってみると、林さんはすっかり元に戻っていました。
わたしは当初、「のはら」から「ころころぽん」まで5か月も間があいたことについてこの欄でいろいろ書きましたが、今思えば、これは深見先生の意図的なブランクだったのかな、という気がしています。そもそも「ぽっかぽか」の連載は年2〜3回程度なので別に不自然ではないのですが、今回の「ころころぽん」までの5か月は、「あの時の林さん」は「やっぱりダメだった」とリアルに感じられる効果として作用しているからです。続き話なのは確かですが、だからと言って続けて掲載しなければならない理由なんてないですよね。もしかしたらコミックスで巻の区切りになっているのも意図したものなのでしょうか……?
それはさておき、わたしはこの話がYOUに掲載された当時、こんなことを書いています。
> 個人的には、今まで読んだ原作ストーリーの中でもっとも違和感を感じる話となった。
> みさきちゃんが布団の中から麻美に訴えるシーンがあるが、それを聞いた麻美は、
> 林さんに対して(少しだが)怒りをあらわにする。そして林さんに「この間話したのは
> ムダでしたね!」と怒るのだが、これがどうにも不自然な気がしてならない。
> 「のはら」でも、林さんを直接たしなめたのは吉田さんだった。麻美はいつものように
> 聖人君子の役回りで、「できたての恋人みたいなものかなあ」と静かに語っていたの
> だが、今回はそうでなかったからかも知れない。しかし今回も実際に問題を解決する
> のは麻美ではなく、ご近所の坂田さんだ。
これも今思えば的外れな感想だと思います。
林さんの問題は麻美ではなく坂田さんが解決させるところにポイントがあるのではないでしょうか。
今回の麻美が、普段ほとんど出さない怒りの表情で描かれているのは、それは林さんの問題は麻美では手に負えないからではないかと。
珍しく麻美を怒らせているのは、平和な家庭を築くことができている人には理解できない問題である、というのを先生が認めているからだと思います。話が「のはら」のままで終わってしまうと、林さんと同じ悩みを抱えている読者のお母さん方からは、むしろ反感を買うと思うのです。「麻美のようにきれいごとばかり言ってる人に何が分かるの!」という感想、ひょっとしたら前回の掲載後には多く届いていたのかも知れませんね。
「ころころぽん」はその感想をもとに考えられたのか、それとも最初からこのような2話続きの展開として作られたのか。わたしには分かりませんし、まあどっちでもいいのですが(^^;)、もし「のはら」を読んだきり「ころころぽん」を読みそびれている人がいましたら、是非単行本でご覧になってください。
さてさて、今回の林さんの問題は、最終的には「夫の理解」という形で解決を見ました。
世の中の悩めるお母さん方の問題のかなりの部分に夫との関係が関わっていることは、疑いの余地もない真実だと思います。単純に夫が悪い場合もあれば、もっとこじれている場合もあると思いますが、林さんのケースは夫が態度を改めることで解決しました。
でも、一番難しいのは、果たして世の中の男性(自分も含めて)は、林さんのご主人のように考え、行動することができるかどうか。そのきっかけとなった、林さんのご主人に慶彦が会って手紙を渡す、というシチュエーションも何というか…やっぱり漫画なんですよね。
書かれていることがどんなに大切なことだとしても、それを目にし、心に響いてもらわなければ行動になんて移せるはずないわけです。こんな時、「ぽっかぽか」がレディースコミックや昼ドラであることの限界を感じますね。
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